日本の製造物責任法が成立したのは1994年。それから28年の時が過ぎ、様々な角度から製造物責任法は見直しを迫られるようになりました。ソフトウェアの役割の増大、AI技術の進展、欠陥立証の困難、輸入業者を介さない海外からの製品の流入・・ 平成一桁台に生まれた製造物責任法は、令和の時代の課題に対応できているとはいいがたい状況にあります。

ヨーロッパでもそのような問題は意識され、数年前よりその解決策が議論されていました。その結果を注視していましたが、発表は遅れに遅れ・・ 忘れかけていましたが、本年9月28日、ようやく新指令案の提案が発表されました。「改正」案かと思っていましたが、旧指令にはない新概念が多々盛り込まれ、文字通り、旧指令の廃止と新指令の提案です。

product に デジタル製造ファイルやソフトウェアが含まれるのはそうであろうとして、責任主体が「Economic operator」という新しい概念になっているのにはびっくりしました。‘economic operator’ means the manufacturer of a product or component, the provider of a related service, the authorised representative, the importer, the fulfilment service provider or the distributor; とのことですが、どういう日本語がふさわしいのでしょうかね。

製造物責任は、製品流通の上流にある製造者まで責任を遡らせることで製造者が安全施策に投資する動機付けをするという思想の法律でした。その責任主体が新しくなることは、多少なりとも法律の思想に影響を及ぼすことになるように思います。今後も動向を注視していきたいと思います。

欧州委、デジタル化やAIに対応した製造物責任指令の改正案を発表(EU) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ (jetro.go.jp)